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日常。 仕事(ケーキ)とテニプリのことばかり。
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幸村誕生日おめでとうー!!

ぎりぎり間に合いました、幸誕SSを取り急ぎアップします!!
何が何でも5日中にアップしたかった…!

色々書きたいことはありますが…それはまた後程改めてw
幸村誕生日祝SS。

読んでくださる方は続きからどうぞ。





誕生日と言うものは、何となく気分を落ち着かなくさせる。
普段と変わらない、他の人にとっては何でもない日であるにも関わらず、何だか特別な日であるような気がするし、何か良いことがあるんじゃないかと期待したりもしてしまう。
 俺が生まれた日という些細すぎる理由では日常も世界も何も変わらないというのに。
それでも。
 矢張り俺は、何かを期待していたのだろうか。
 病院のベッドから、午後の陰りを帯びてきた外を眺めて、俺はため息をつく。
 何かを期待していた訳ではないけれど…流石にちょっと落ち込んだ。
 今日に限って家族はみんな用事があるとかで、面会には来てくれないし。…でもその代わり昨日わざわざみんなで大きなケーキを持ってきてお祝いをしてくれたから、酷いとか冷たいとか…そんな風には思わなかったけど。
 でも…今日に限って体調は芳しく無いし検査の結果もあまり良くなかったりと嬉しくないこと続き。
 せめて誕生日くらい良い気分にさせてくれよ、と思ってしまうのも仕方のないことだと思う。
それに加えて…今日に限って誰もお見舞いに来てくれないなんて。
勿論皆にだって都合があるから、だれもお見舞いに来ない日だってないわけではない。
…でも…今日は来てほしかったという気持ちは…隠し切れなかった。
練習があるというのならまぁ…仕方ないだろうとは思う。でも部活の予定表を見てみたら…今日の練習は休みなっていたから、否定しつつも心の中では期待していたんだ。
皆とは言わないけれど…一人か二人でも俺の誕生日を覚えていてくれて、お見舞いに来てくれたら嬉しいって。
でも外は徐々に夕焼け色に染まってゆくばかりで、誰かが訪れる気配はない。
今日はもう誰も来ないんだろう。
そう判断した俺は…気を紛らわせるためにジュースでも買いに行こうかと苦労しつつもゆっくりとベッドから起き上がる。
少し熱っぽい気がする頭が、微かに痛んだ。
ゆっくりと床に足を下ろして、立ち上がる。
…昔は当たり前に出来た行動が、今は一一全神経を傾けて全力で向かわないとできない。そして今日は特に身体が言うことを聞いてくれなくて俺は思わず舌打ちを漏らす。
俺はもう何度目かわからない「今日くらい…」というどうしようもないことを考えつつベッドの手すりを支えに立ち上がる。
その時ちょうど廊下からバタバタという足音が複数聞こえてきたので、病院の廊下を走るなよ…と思いつつ、また隣の病室の、良くはしゃいでいるあの子たちかと、俺は苦笑を漏らした。
 だが、次の瞬間。
「幸村!」
「幸村君!」
「幸村部長!!」
「うわっ!?」
 勢い良く病室のドアが開けられてテニス部レギュラーの面々がなだれ込んできたので、驚いた俺の手は掴んでいた手すりから滑り…結果よろけた俺は足がもつれてその場にしりもちをついてしまった。
 床の冷たさが、布越しの俺の体温をあっという間に奪ってゆく。
「ゆ、幸村!大丈夫か!?怪我はないか!??」
ほかの面々を突き飛ばして勢いよく駆け寄ってきた真田が、あたふたと俺の身体を確認する。明らかに挙動不審な動きで俺の全身を確認していた真田だったが、目立った外傷がない事を悟ると安心したようにため息をついた。
「そんな事より部長!誕生日おめでとうございます!!」
 そんな真田を押しのけて俺の前にやって来たのは、赤也だ。
 その赤也の手には…両手で抱えなければならないほどの大きな花束。
 春の花がふんだんにあしらわれたそれは、白い病室の中ではひときわ鮮やかに映ええた。
「あ…ありがとう」
 手を伸ばして受け取ると、ふわりといい香りが漂った。
 呆然とする俺に、皆が次々に声をかけてくる。
「遅くなってしまってすまなかったな、精市。誕生日おめでとう」
「おめっとさん。皆でプレゼント探しに行ったんじゃが…なかなか決まらんくてのぅ」
「お誕生日おめでとうございます、幸村君。遅くなってしまって本当に申し訳ありません…」
「ほんと悪いな、おそくなっちまって…。誕生日おめでとう」
「ハッピーバスデー幸村君!結局花束で悪ぃな…」
「…誕生日おめでとう、幸村。学校が終わった後皆でプレゼントを買いに行ったのだが…結局これというものが見つからなくてな…とりあえず花束に落ち着いた。お前が退院したら…その時に、俺たちは今度こそこれだと思うプレゼントをお前に渡そう。だから、早く帰ってこい」
 呆然と、床に座り込んで皆の言葉を聞いていた俺は…最後の真田の言葉に、黙ってこくんと頷いた。
 そのまま、花束をぎゅっと抱きしめて俺は顔を伏せる。
 花の鮮やかな色が、滲んでぼやけた。
「ど、どうしたのだ、幸村!?」
 目の前にいた真田が再びワタワタと挙動不審なようすで俺の表情を覗き込もうとするので、俺は慌てて顔をそむけた。
「…皆、俺の誕生日なんて…忘れてると思ってた…」
「俺たちが精市の誕生日を忘れるはずがないだろう?」
「そっすよ!だって部長の誕生日っすよ!?」
「忘れたら呪われそうじゃしのぅ」
「に、仁王君!!」
 いつも通りのみんなの様子が…とてもうれしい。
 とりあえずだと言ってくれたこの花束だって、中学生の身には安くない買い物だっただろう。わざわざ学校が終わってからみんなで俺のためにプレゼントを買いに行ってくれていたのに、皆俺の誕生日なんて忘れてしまっていると決めつけてしまった自分自身が情けない。
「ありがとう…みんな」
「退院してきたら、俺が特製バースデーケーキ作ってやるから、楽しみにしてろぃ!」
「部室で誕生日パーティーってのも、いいかもしれねぇな」
 さっきまでの、寂しくてひねくれていた気持ちは、もうどこかへきれいに消えてしまった。
 皆がこうして祝ってくれるから…俺はこんなにも幸せだ。
 例えここが病院であったとしても。
「ありがとう。早く治して退院するから。…だから…」
 語尾が震えて、言葉が続かない。
 と、ふわりと人のぬくもりを感じた。
「…俺たちはいつまでだって待っている。例え離れていても…お前が生まれてきてくれてよかったと思う気持ちに偽りなどない」
 真田の暖かい腕に包まれて…俺はゆっくりと目を閉じた。
 皆が冷やかしの声を投げかけて来るが、それも心地よい。
 今日は間違いなく、特別な日だ。
 皆が祝ってくれるだけで、こんなにも簡単に特別な日に代わってしまう。

 そのうれしさをかみしめながら…俺はしばらく真田の腕の中で、花束を抱きしめたままじっと目を伏せていた。
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