は
はーっはっはっは、と跡部さんの真似をして高笑いしてみたら、神の子さんに思いっきり頭を殴られた。
流石に予想外だったので驚いて神の子さんを見ると「ごめん。高笑い聞くと反射的に真田を思い出してしまってね…」と謝られた。
なるほど、あの人は高笑いするたびにこうして殴られているのか。
そう思ったら何だかおかしくて、俺は思わず笑ってしまった。
ひ
「秘密、だ」
俺がそう答えると、精市は物凄く不満そうな顔をした。
けれども俺は知っている。
神の子の前では、隠し事など出来はしないのだ。
ふ
不思議な気分だった。
去年は幸村部長が立っていた場所に、俺が立っている。
『俺は俺、赤也は赤也だから、俺になろうとする必要は無いんだよ』
幸村部長の言葉が蘇る。
…わかってるっす。俺は、俺のやり方で立海を全国制覇させてみせる。
去年のあの悔し涙を、俺は絶対に無駄にはしない。
だから、アンタたちも。高校で絶対にインターハイに行って、全国制覇してください。
俺は、祈りを込めてジャージを肩から羽織って歩き出した。幸村部長がいつもそうしていたように、風にジャージが翻る。
公式戦第一試合。
ここから俺の夏は、始まる。
へ
「へん」
「…変、ですか」
「変かのう…」
ベッドに身を起こした幸村に言われて、紳士と詐欺師は考え込んだ。
そんな二人を見て、幸村は小さく笑う。
「ほんの少しなんだけどね。…そうだな、柳生はもっと慇懃無礼で仁王はもっとちゃらいかんじなんだよ」
入れ替わり練習中の二人が、頭を抱える。
そんな二人を見て、神の子は楽しそうに笑った。
ほ
微笑みを浮かべた副部長を見てしまった。
正直言って、超キモイ。
だって、あの副部長だぜ?高笑いしている姿は想像できても、微笑んでいる姿なんてまっっったく想像できないような、あの副部長。
ああーもうっ、思い出しただけで背筋に悪寒が走る!
「どうした、赤也。そんな嫌そうな顔をして」
「あ、柳さん!さっき副部長が微笑んでたんすよ!マジ気色悪くって!」
「ほう…あれを見たのか。災難だったな」
…やっぱりあれを見てしまうことって災難だったんだ。それを自覚した俺はがっくりと肩を落とした。
あれを向けられてうれしそうに笑っている部長の趣味、マジでわっかんねぇ。
「精市の趣味は悪いぞ?」
「…人の心を読むアンタも十分趣味悪いっす」
俺がそう答えると柳さんは違いない、と言って笑った。
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