同じく先ほど書いた真幸前提のブン幸ダークSS。
…とはいえ、これが一番ダークではありません。というか、ダークではないような気がするようなしないような。
調子に乗ってシリーズ化させてみた「幸村を壊してみよう!」な話たちですが、最後の柳幸だけまだできていません。
一応イメージはあるのですが。
ダーク風味なブン幸。
興味のある方は続きからドウゾ。
【壊した君と、その欠片】
『涙の欠片』
俺は、幸村君の上に馬乗りになって、その白くて細い首に手をかけていた。
このまま力を込めて少し待てば、幸村君は死ぬ。
つまり幸村君の命を握っているも同然だった。
なのに、幸村君は抵抗しない。
助けを求める事もない。
やめろ、と俺に言う事もない。
「幸村君は、どうして抵抗しないの?」
「して良いの?俺を殺したいんだろ。やりにくくなっゃうよ」
確かに、俺の部屋にやってきた幸村君を無理矢理押し倒して『殺して良い?』って聞いたのは俺だ。
俺は、幸村君が好きだ。
だから、幸村君が真田なんかに持って行かれてしまう事が我慢出来なかった。
でも、幸村君が幸せならそれでも良いって、そうやってどうにか自分を納得させて中学、高校と過ごしてきた。
そのうち幸村君達が別れる可能性だってあるんだから。
けど、大学生になっても幸村君は真田と付き合っていて、挙げ句の果てに一緒に住むようになっていた。
絶対に手に入らないなら。
いっそ、俺の手で殺したい。
その欲求は日に日に強くなって行った。
幸村君が一人で俺の部屋に来た今日…
俺はその欲求を押さえきる事が出来なかったのだ。
「幸村君、死ぬの、嫌じゃ無いの?」
「何を躊躇ってるんだい?そのまま手に力を込めれば。それで終わりだよ」
言われて俺は、手に力をこめる。
これで俺の、長年の願いが叶う。
そのはずだった。
だけど。
「…やっぱり、無理だ…」
俺は、幸村君の首から手を離して頭を抱えた。
あんなに願ったのに、手が動かない。
…何て、情けない
「ブン太は、優しいね…」
幸村君が、寂しそうに笑った。
「ブン太が俺を好きな事、知ってた。でも俺のためにその思いを我慢してくれてた事も。…だから、ブン太が本当に俺を殺したいなら、殺されてあげようと思った。ブン太の長年の苦しみに、俺はこんな方法でしか報いる事が出来ないから」
視界が涙で滲んで、水分がぼろぼろとこぼれ落ちた。
そんな俺を、幸村君がぎゅう、と抱きしめてくれた。
初めて抱きしめてくれたその背に手を回して、俺も幸村君を抱きしめる。
耳元で、幸村君が言った。
「ブン太はやさしいからきっと、俺を殺せない。そこまでわかってブン太の願いを叶えようとするふりをしたズルい俺を、許して…」
俺はずっとブン太の優しさに甘えているんだ、と言った幸村君は、まるで泣いているように見えた。