side[G]
「フハハハハハ、ぬるい、ぬるいわ!」
向こうの方で真田が高笑いをしながら試合をしている。
…正直言って、ウルサイ。
けれど、これくらいでウルサイとか言っていたのでは真田の相手なんてしていられないので、俺はため息をついて隣の蓮二を見上げた。
「ねぇ蓮二。真田のデータってカンペキ?」
「…完璧とまでは行かないが、それなりの完成度を誇っているつもりだが?」
「じゃぁ、そんな蓮二に質問」
良くわからない雄叫びを上げて、真田がボールを打ち返す。
ちなみに、相手は仁王だ。
何故におうが真田と試合をしているのかと言えば、イリュージョンのデータ収集のためらしい。仁王曰く『あんま使えなそうじゃが、まぁ一応…』との事だ。
ペテンを完璧にするためには真田との試合も辞さないあたりは感心だ。
後で褒めておこう。
「真田のあの根拠のない自信ってどこからくるの?」
「…それは永遠の謎だな」
「ふーん、蓮二でもわからないんだ」
なら真実は闇の中、だな。
再度響く、真田の勝ち誇ったのごとき自信満々の高笑い。
あのうるさい口をどうやって塞いだものか、俺はしばし考える。
Side[A]
「ヒャーッヒャッヒャッヒャッ」
向こうの方で悪魔化した赤也が高笑いしながら試合をしている。
俺の隣でウットリとした表情でそれを見ているのは精市だ。
「はー、赤也可愛いなぁ」
ふふふふふ、と笑う精市は、楽しそう且つ幸せそうだ。
精市は普段から赤也を猫っ可愛がりしているが、俺的に今の赤也を『可愛い』と評するのはどうかと思う。
否、精市のセンスはかなり独特で、それも魅力のひとつだと思っている。
思ってはいるが…理解できるかどうかは別問題だ。
精市の思考回路は酷く難解で、常人のそれとはかけ離れている。
データを取るのも一苦労だ。
…最も、そんな部分が愛おしいのだが。
「あー、あの赤也持って帰りたいー。ペットにしたいー」
「よせ。いくら精市の頼みでもあれはダメだ」
「えー、どうしてー?蓮二のイケズ」
むぅ、と頬を膨らませて講義してくる様子はとても可愛らしい。
が、駄目なものはダメだ。
俺は駄々をこね続ける精市を本格的に説得するべく、覚悟を決めたのだった。
PR