【劣等感】
ねっとりと、精市の肌に舌を這わせた。
敏感な身体はびくりと震えて快感を訴えてくる。
「や…ぁ、れんじぃ…っ」
「なんだ」
精市が請うように俺の名を呼ぶ。
けれど俺はそれに気づかない振りをして素っ気ない返事を返し、執拗な愛撫を続けた。
「あ、やぁっ…だめ、…ぁっ」
自分の思うままに快感を与え、精市を喘がせる。
それは途方もない愉悦を俺にもたらす。
わかっている、これは俺の劣等感から来る醜い感情なのだ…と。
けれど俺はそれに気づかぬふりをする。
「蓮二ぃ…お願い、も、許して…」
精市が大きな瞳にいっぱいに涙を溜めて乞うている。
それだけで俺は満たされる。
さっきから決定的な刺激を与えていないから、精市はよほど辛いのだろう。
まばたきするたびに、ボロボロと涙が零れ落ちてくる。
三連覇と常勝という鎖に雁字搦めに縛られ、愛という名の首輪でつながれている捕らわれの神の子。
それでも彼は毅然と上を見上げている。
辛そうな素振りも、悲しみも虚無も絶望も、彼は俺達下等な「人間」に見せはしないのだ。
だからこそ、手に入れたい。
捕らえて閉じ込めて、俺だけのものにしたい。
俺のこんな醜い感情など、精市はお見通しなのかもしれない、と思う時がある。
口付けを求めてきた精市に答えてやりながら、俺は一人、暗い笑みを浮かべていた。
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