『一番ありえないのは誰?』
突然弾けた笑い声に、俺は何事かとそちらを振り返った。
見れば幸村部長と跡部さんが、大笑いしている。そしてそれとは対照的に、憮然とした表情を浮かべている手塚さん。
状況から見ると、手塚さんの何らかの言動が二人のツボにはまったみたいだった。
「あははは、流石は手塚!考える事が面白いよね」
「流石の俺様も予想がつかなかったぜ」
そんな事を言いつつも笑いの衝動は収まらないらしく、幸村部長も跡部さんも肩を震わせていた。
俺は笑い声が上がるまで柳さんと話してたし、部長達とは会話を集中して聞いていないと聞き取れないくらいの距離がある。
いったい何の事なのかサッパリだ。
「俺は普通だと」
「いや絶対普通じゃない(ねぇ)!」
手塚さんのささやかな反撃は、最後まで紡がれる事無くたたき落とされた。
手塚さんはむっとした…のかもしれなかったけど、元から感情が表に出ない人だからここから見ただけじゃさっぱりわからなかった。
幸村部長だったら不機嫌オーラMax!なかんじになるだろうに。
「手塚、眉間が真田になってるよ。…仕方ない、俺達の言う事が納得できないなら青学の人にも聞いてみようよ」
「それが手っ取り早ぇな。よし、おい、青学の奴等!ちょっと来い!」
跡部さんの、偉そうながら有無を言わせぬ呼びかけに、青学の連中が何事がとゾロゾロ集まってくる。
全員がそろい、しばらくごにょごにょとやっていたかと思えば、「えー、ありえねぇ!」と言う声が上がり次いで爆笑の渦に飲み込まれた。
「柳さん。部長達何の話ししてんすかね」
「…ふむ、そういう事が」
「は?もしかして、何話してるかわかるんすか?」
隣の柳さんに同意を求めてみたら、意外な答えが返ってきたので俺は驚いて目を見開く。
「わかるぞ。当たり前だろう?」
「え、どうしてわかるんすか!?」
当たり前って、俺にはわかんないし聞こえないんすけど!読唇術?いや、読心術?それともエスパー!?
「精市のな関わることなのだから、俺がわからないはずがないだろう?」
…聞いた俺がバカでした。
あーそーだよ!柳さんってのはこーゆー人だった!
俺はため息をついた。
質問をかえる。
「で、部長達は何の話ししてんすか」
ニヤリ、と柳さんが笑った。
「秘密、だ」
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