や
やれやれ、と柳生はため息を突いた。
部室の中は、珍妙且つ奇妙奇天烈な状況に陥っていた。
真田が帽子の代わりにバケツをかぶっていたり、赤也の髪の毛が爆発してワカメの群生地のようになっていたり、
ジャッカルの頭部に妙にリアルな顔が書いてあったり、ブン太の頭が真っ青になっていたり。
珍しい事に幸村まで被害にあったらしく、池にでも飛び込んだかのように全身ずぶぬれだ。
「…また仁王君ですね。幸村君まで巻き込まれるとは、珍しい」
「仕方無いだろう?俺が避けたら大事な部誌と生徒会に提出する書類が水没するとこだったんだから」
びっしょり濡れて張り付いた髪をかき上げて幸村は柳生に命令した。
「今すぐ仁王をここにつれて来い。もう蓮二が行ってるからそれに合流して」
「イエッサー」
神の子にまで手を出すとは、仁王も無駄なことを…と思いながら柳生は幸村の指示に従って部室を後にしたのだった。
ゆ
「ゆぅきぃむぅらぁぁぁぁぁ!!!」
「うるさい!」
幸村の拳が、一直線に突っ込んできた真田の腹に見事に食い込んだ。
間近でそれをみた赤也と仁王がパチパチと拍手をする。
悶絶する真田には見向きもせず、幸村は柳と腕を組んでさっさと歩き出した。
よ
予想を裏切って、赤也は見事に幸村君の攻撃をかわした。
いつもなら幸村君はそんな赤也の成長を喜ぶところだろう。
けれど今は、なにぶんタイミングが悪かった。
幸村君の表情がさらに不機嫌なものに変わる。
それを見た瞬間、赤也は脱兎の如く逃げ出した。…となると当然、幸村君の怒りの矛先は近くにいた俺とジャッカルに移るわけで…。
「ちょ、赤也!まじふざけんなよ!」
俺とジャッカルも赤也の後を追って全力でその場から逃げ出した。
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