ら
「精市、来週の日曜日はあいているか?」
「ん。暇だよ」
「ではデートに行かないか?」
俺がそう言うと精市は嬉しそうに笑った。
それは承諾の返事と同義であり、俺の表情も自然と緩む。
だが。
「真田も一緒にね。デートなんだから」
一瞬それに異論を唱えたくなったが…精市の幸せそうな笑顔を見て、結局俺はその言葉を飲み込んだ。
神の子を独り占めしようとすることなど、出来はしないのだから。
り
理由なんて無い。
強いて言うならば、ただ俺がそうしたかったから。
「…かな」
そう言うと、真田は盛大に散らかった部室を眺めて再び頭を抱えた。
る
「留守番」
「…何じゃ、藪から某に」
「留守番中なんだよ。…俺は、一人は嫌いだ」
「イエッサー。すぐ向かうナリ」
幸村は入院して以来、一人でいることを極端に嫌う。
だから、こうして唐突に呼び出されることなんてしょっちゅうだ。
真田や柳を頼らずに良く似た精神構造の仁王を頼ってくるのが、実に幸村らしいと思う。
幸村の気持ちがわかるから、仁王はいつも幸村の呼び出しに応じる。
ほんの少しの優越感を、抱きながら。
れ
練習は…正直言ってものすごくしんどい。
部長が入院しいてからというもの、元からきつかった練習メニューは更に厳しいものへと変化した。
でも俺たちは必死にそれをこなす。
誰一人として弱音ははかない。吐くはずが無い。
俺たちは、無敗で部長の帰りを待つと誓ったから。
部長はもっと辛くて、もっと頑張っていることを知っているから。
俺たちはせめて、その誓いだけは守らなければならないんだ。
ろ
「ろくでもねぇな」
「ろくでもないね」
「ろくでもないな」
氷帝、立海、青学の部長が異口同音に呟いた。
視線の先には、ろくでもない理由でけんかを繰り広げる二年生たち。
三人は顔を見合わせてため息をついた。
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