「確かにさ、俺はボウヤに負けたよ?」
真田副部長の前に立った幸村部長がそう言った。
物憂げな表情をしているが、威圧感がにじみ出ている。
やべぇ。
こーゆー時の部長は触らぬ幸村部長に祟り無しってヤツだ。
俺はとばっちりを食う前に素早く柳さんの後ろに逃げた。
柳さんの近くが一番安全なのは実証済みだ。
幸村部長が柳さんを攻撃する事はまず無いし、例え攻撃されたとしても柳さんなら受け流せるからだ。
まぁ、まれに直撃食らってる時もあるけど。
「ゆ、幸村…」
「だけどさぁ、お前誰の味方なワケ?ボウヤ?それとも俺?」
「幸村に決まっているだろう!」
真田副部長は勢いよく答えたが、途端に幸村部長の氷の視線が降り注ぐ。
真田副部長が固まった。
…俺の前で柳さんが小さい笑を浮かべる。
こぇぇ…
「真田さ、ボウヤが記憶を取り戻すのを手伝ってあげたとこまではまぁ、ボウヤに免じて許してあげるよ」
「なぜあいつに免じてなのだ…」
真田副部長がポツリと文句を零す。
その瞬間部室中から注がれる冷たい視線。
流石の真田副部長もそれは堪えたらしく「な、何なのだ」とか言いながら二、三歩後ずさった。
「だけどさぁ、何で雷まで見せたわけ?しかも俺が負ける、とか言ったよな」
「いや、誤解だ!幸村!」
「何がどう誤解なんだよ。それに、どっちが勝っても祝ってやろうって言ってたらしいじゃないか。蓮二とボウヤの証言もある」
「何故越前の証言まで揃っているのだ!」
真田副部長は懸命に反撃を試みているが、相手が部長じゃ適うわけがねぇ。
必死の真田副部長に注がれる、部長の氷点下の視線。
そして死刑宣告が下る。
「確かに負けた俺が悪い。けど、お前…俺じゃなくボウヤの味方をするとどうなるか、わかってるだろうな?」
「ま、まて!幸村、俺は…」
「ねぇ真田。褌姿で説教されるのと皆に制裁を下されるの、…どっちがいい?」
それはある意味究極の選択。
どちらを選んだところで、真田副部長に明るい未来など残されてはいないのだ。
けど、それも当然だと思う。
だって幸村部長に逆らったんだ。当然の報いを受けてしかるべきだろう。
「幸村…!」
「選ばないなら両方、だな。やれ」
幸村部長のその一言に、俺たちはゆっくりと立ち上がった。
勿論、視線の先は真田副部長。
「ま、待て…!」
直後、副部長の絶叫が部室に響き渡った。
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